jidoutekina

感想はすべてネタバレ無双

『コーヒートーク』終わった~

分岐は最善ではないがそこそこいいエンドくらいだったのでは。
とても心地のいいゲームで、デザイン・絵のつくり・音楽・せりふ回しなど、どれもかなり好み。
ゲーム画面はどのシーンもそれだけで飾りたいくらいかわいい。店主のスマホが使えるのも楽しいし。
音楽は本当にめっちゃ好み!でしょっちゅう聴いている。こういう邪魔にならないロ―ファイ系大好き。
雨音と混じりあって鳴ってるのもいい。

 

ストーリーも「ちょうどいい」。
プレイヤーの位置があくまでそれぞれのキャラクターの人生のタイミングに関わる、というところに留まっているのが、この心地よさに影響していると思う。
そこで発される言葉、心を強く動かす出来事そのものは、彼らが交わしプレイヤーが聞く会話であり、店外で起こっていることにある。
かといってこちらが無力かというとそんなことはなく、何のドリンクをいつ出したかという些細なことが変化をもたらすことはゲームシステムによってもわかっている。
ほんの少しみんなの人生の向きをよくする、という加減の関わり方ができるのが好みのバランスだった。
起きている課題はリアルでも、大きめの事件は新聞のカットで示されているとか、そのへんの語り方の距離感も遊びやすい。

でもって、彼らの会話もいいんですよね。
たいてい「反した価値観を持っている二者が会話して折衝点を見出す」という構造になっているんだけど、そこのバランスのとり方がいい感じ。
こういうのでよく感じるのが、「ああ~、これこっちのが『正しい』感じだからこっちに寄ってくやつだ~」っていう、作り手側の…大抵にして先進的な価値観で論破っぽくなるパターン…という印象になるやつで。そうではなかったのがかなりよかった。
特にレイチェル・ヘンドリー父娘のエピソードはそれを感じられて好き。
一見すると「自由に働きたい娘と過干渉に束縛する父親」でしかなく、実際フレイヤによってその親のエゴは明文化されている。でも、その一面がすべてではない。「芸能界の悪意を知る元業界人と未成年の少女」という面も間違いなくあり、結果的にレイチェルは守られた。
そしてレイチェルの夢を止めずにヘンドリーが支えられるような折り合いに落ち着いていく…という、まとめると余韻がないんだけど、二者それぞれの視点に誠実な話で強く記憶に残っている。
この話は取り持ってくれたフレイヤの言葉選びも伸びやかで、冷静にそれぞれの認識を見ててくれてそこも好き。
他のエピソードでいうと、ガラが今の職を選んだ経緯もよかった。他者を癒すことで自分を癒そうとつとめている、という話。あれはすごく彼の人となりに対しての納得があって印象的。

好きなキャラクターはフレイヤ
彼女はまず見た目からしてすごく好きなタイプなんですが(ベリショが似合う女の子かわいい)、人となりがとてもいい。
明るく活発で表情豊かなんだけど、嫌に感情的になることはない。アート・サブカル趣味ぽいけど、視野や思考がひねくれてない。マスターとのやり取りも軽やかで見てて楽しい。
人としてすごくいいなあ~と思ってプレイしてました。呆れた顔がかわいいし。
ガラも好き……というかガラはみんな好きだろまである。この人の造形はズルい。

作中ドリンクのお気に入りは「真夏の夜の夢」と「STMJ」。STMJ、飲んでみたいな。
ガラハッドやミルキーウェイも飲んでみたくなる。
ホットドリンクのみでしょうがを多用してるあたり、普通に好みの品ぞろえばかりでどれもおいしそうなんだよなー。

全体を通して、ほどよく距離を取りつつ居心地のいい、それ自体が良い喫茶店みたいなゲームだった。続編もやりたい。